AMVの歴史③:ケビン・コールドウェル

2020-03-29Column

AMVは、いつから作られるようになり、そしてどのように世界に広まっていったのか。
第3回は、1990年代後期から2000年のお話です。

ノンリニア編集の普及

AMVコンテストの登場でAMV人気は高まりましたが、AMV制作者の数は決して多くはありませんでした。
編集に必要な高価な機器と、多大な忍耐と努力を要するリニア編集は、AMVを作る上での大きすぎるハードルとなってしまっていたのです。

しかし、1990年代後期、パソコン、ビデオキャプチャカード、そしてノンリニア編集ソフトウェアが普及した事で、そのハードルはグッと下がります。
ビデオテープに記録された動画を、キャプチャカードでデジタルデータとしてパソコンに取り込む事が可能になり、そのデータをアドビの「Premiere」やアップルの「Final Cut」といったソフトでノンリニア編集出来るようになりました。
映像データをどこからでも即座に追加・削除・修正・並び替えできるノンリニア編集の一般化に加え、アメリカでのアニメ人気の上昇も相まり、AMVエディターの数は急増しました。

更に、ケビン・コールドウェルさんという1人のエディターの登場が、アメリカ国内でのAMV人気を確固たるものにします。

「伝説」ケビン・コールドウェル

ケビン・コールドウェル
引用元:Anime Music Videos .Org

ケビン・コールドウェルさんは、1996年にAMV制作を開始し、1997年に開かれた”A-kon”のAMVコンテストで初めて賞を受賞しました(※)。
※AMVコンテストには様々な部門があり、エントリーされた動画の中から部門毎に表彰を行う。この頃は、アクション部門・コメディ部門・ドラマ部門の3つが「主要3部門」として特に注目を集めていた。

そして、1998年の”Anime Expo”で、主要3部門全てを受賞するという前代未聞の偉業を成し遂げた事で、その名はAMVファンの間で一気に知れ渡ります。

その後も、AMV制作活動を引退する2000年まで多くの賞を受賞し、1990年代最も称賛を集めたAMVエディターとなりました。

ケビン・コールドウェルさんが作るAMVの特徴はなんといっても、当時比類のない程正確な音ハメ(※)でした。
※音ハメ:音楽のリズムや歌に合わせて、アニメーション作画やシーン切替を同期させる、AMVにおいて重点が置かれるテクニックの1つ。
この音ハメに特化したケビン・コールドウェルさんの編集スタイルは、AMVの新境地を切り開き、現在まで引き継がれています。

また、2000年に公開された2本を除く全ての動画がリニア編集で作られた事も、高い称賛を集めた理由の1つとなっています(2000年の動画は、Windows98のPCを使ったノンリニア編集)。

ケビン・コールドウェルさんの動画の影響は、多くのAMVエディター及びAMVファンを生み出し、コンテストシーンに興隆をもたらしました。

ケビン・コールドウェルさんのAMV

ケビン・コールドウェルさんは、5年の活動期間で12本のAMVを作成しました。
ここでは、その中の4本を紹介します。

Sleep Now(1999年)

「KEY THE METAL IDOL」を使用した、緊迫感あふれるAMVです。
“Anime Expo 1999″では、ドラマ部門・クリエイティブ部門を受賞しました。

Engel(1999年)

アスカ・ラングレー(エヴァンゲリオン)にスポットを当てたAMVです。
非常に完成度の高いリップシンクで、AMVコミュニティに大きな衝撃を与えました。
“Anime Expo 1999″では、総合部門・アクション部門・技術部門を受賞しました。

Believe(2000年)

「バトルアスリーテス 大運動会」を使用したAMVです。
デジタル編集に移行した事で、『Engel』よりも更に細かく編集されたリップシンクが特徴的で、また、当時のAMVとしてはかなり野心的な、”マスキング”(※1)や”オーバーレイ”(※2)といった編集技法を用いた動画としても有名です。
※1 マスキング:画像から特定の部位だけを切り取り、それ以外の部分を見えなくする技術の事。
※2 オーバーレイ:動画と画像を重ねたり、2つ以上の動画を1つの画面に配置する技術の事。

Caffeine Encomium(2000年)

クラシック音楽「ウィリアム・テル序曲」に合わせて、倉田紗南(こどものおもちゃ)の天真爛漫な動きをシンクロさせる絶巧なシーン選択が印象的な、とにかく楽しいAMVです。
“Anime Expo 2000″では、コメディ部門・クリエイティブ部門・編集部門を受賞しました。

ケビン・コールドウェルさんの動画の中でも、特に『Engel』と『Believe』は評価が高く、現在のAMVにおける”音ハメ”、”リップシンク”、”マスキング”、”オーバーレイ”の技法の礎を築いた、AMV史に残る傑作といわれています。

残念ながらケビン・コールドウェルさんは、2005年に癌で他界されてしまいましたが、彼がAMV界に残した影響はあまりにも大きく、海外のAMVファンの間では、今でも伝説として語り継がれています。

「AMVの歴史④」へ続く

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Posted by John