[iha’s column] 惡のすゝめ
今回取り上げる御質問なのですが「人を殺す表現についてどう思うか?」です。
受け手・消費者として、サスペンスや、戦争物などを楽しんでいる間は、あまり疑問に感じないかも知れないのですが、自分が作品を世に放つ側に立ってみると、疑問に思う事が多い様です。
AMV/MAD作家の場合だと、「こんなに人を殺すシーンを集めて動画にしている自分は、これで良いのか?」と感じるのだと思います。
この疑問に関しては、人それぞれに折り合いや回答を見つけているかと思いますが、他人の意見を聞くのも面白そうなので、私にも聞かれるのだと思います。
今回はこれに絡めてAMV/MADにも関係が深い、「性犯罪」と「児童ポルノの二次元規制問題」についても、私見を語りたいと思います。
私は心理学や宗教学、民俗学が専門なので、法学的問題に関しては思いっきりカットしておりますが、皆様、宜しく御願い致します。
■ 穢れのすゝめ
この問題を語る時、まず最初に語らなければならない事があります。
それは「殺人」や「性」などの話は、日本においては顕著ですが、世界でも多くの文化圏で「穢れ」と呼ばれ避けられていると言う事です。
「穢れ」だと考えられている代表は、「死・病気・怪我・血・排泄物・月経・女性・近親相姦・獣姦・罪・蠱・呪い・魔術」などでしょうか。
これらを扱う作品や、この記事は、基本的には隠されなければならない訳です。そこをまずは理解して頂きたいです。
「穢れ」の反対は「神聖」なのですが、「神聖」も隠すべきものであると考えられているのは面白い所です。
「神聖」であるものは「穢れ」を浄化する物であり表裏一体なのです。
民俗学等では、「穢れ」は「気枯れ」、気が枯れた状態であるとし、罪を犯し易い状態であるとも考えられています。
「気」を回復する為に、「御祓い」を行ったり、喪中として時間を置いたりする訳です。
そして、「穢れ」に触れる事は、創作物であっても感染を引き起こし、「穢れ」を生じると言う事を理解すべきです。
そして、それらの創作物が、表裏一体で「穢れ」を「祓っている」と言う事も、理解すべきだと私は思っています。
人は「穢れ」を生まずには生きられません。
その「罪」を浄化する為に、手を洗ったり「祓い」の儀式が必要なのです。
「神」の多くも「殺し」「汚し」「罪」を犯してきましたが、それを語る事も「祓い」のシステムの一つです。聖書や経典などがこれに当たります。
日本においては特に「宗教」が身近から遠ざかってしまったが為に、「物語」と言う、別のシステムが必要とされているのだと思います。
「殺人」や「罪」を犯した者は、サスペンスではその多くが逮捕され、戦争物では死んでいきます。
これらの「物語」が「祓い」なのです。
宗教は殆ど、このシステムだと思って頂いて良いかと思います。
そして、神に赦されたり、悪魔が忌み嫌われたりする訳です。
「穢れ」は隠さねばなりません。触れれば穢れます。
しかし、それと同時にそれを語る事は、宗教を語る事と同じくらい行わなければ、人間の意識は「罪」に飲まれるのです。
世に「殺人」や「性」などの「物語」が一定数存在するのは、実は心理学的、宗教学的にも正しいと言う事を、まずは訴えたいと思います。
■ けもののすゝめー!
「野生の動物」が、縄張り争いや雌の取り合いで殺し合うのは結構知られています。
オラウータンやチンパンジーになると、集団でイジメ殺したり、共食いしたりもします。他にたくさん食べ物があってもです。
人間にも「弱い物を狩って食べたい」「敵を殺して安心したい」「性を貪りたい」などの本能があるのです。
人間にも、ケモノの様な「野生」や「本能」がある事を、私はまず自覚するべきだと思っています。
その「本能」を沈める基礎となっているのが、人間においては「社会性」です。
好き勝手に他人を害したら、社会によって「罰」せられます。
しかし、「社会」があっても、「本能」がなくなる訳ではありません。
「本能」が満たされない状態をフラストレーションと呼ぶ訳ですが、度合によってストレスを生じさせます。
ここで一つ注意です。ストレスは、ストレスと認識すると、健康に被害を生じさせます。
「人を殺さない事が当然」「強姦なんかしないのが当たり前」そう思っていた方が良いのです。
次に良いのは「自分は人を殺さないことによりストレスを受けている。しかし、そんな事は当たり前である」と認識する事です。
一番悪いのが「殺人者は世に溢れているのに、自分は人を殺さない事により損をしている」と思ってしまう事です。
この場合、健康被害に到る他にも、「闘争」か「逃走」に到る事があります。
ストレスをストレスと認識したまま真正面から受け続けると、43%も死亡率が高まると言う研究結果もありますので是非注意して受け流して下さい。
ストレスを受けると心臓が痛くなったりしますが、これを悪く受け取らず、「心臓が血や酸素を巡らせて、健康にしようとしてくれているんだ」と認識するのが良いと言われています。
また、自分のストレスの度合いを知ることで他者を同じように愛することができると言う「愛他的利己愛」の状態に至るのが良いとも言われます。
分かり易く言うと「リア充爆発しろ!って言ってる人の気持ちが、自分には分かる! 良く分かるぞ!」って言う状態です。
自分だけがモテない、給料が安い、仕事がキツイ、友達がいない、学校に行きたくない等と思わずに、ネットで「リア充爆発しろ!」と、皆で叫ぶのが実はお勧めです。
さて「本能」ですが、満たしてしまうのが最終的な解決方法です。満たさないといつまでもストレスが掛かります。
そうです。この「本能」を、「物語」で満たしてしまうのです。
■ 妄想戦士よ、すゝめ
「激しい銃撃戦」「愛に溺れる恋愛」これらの「物語」は、絶対に必要であると私は思っています。
「本能」は、遺伝子や環境などによって様々に変化する物なので、ある一定の人達には「拷問」や「スナッフ」の「物語」でさえ必要かと思っているほどです。
そして「悪」を描く時、実写だと辛すぎるので、アニメや漫画が喜ばれるのは、これまた必然かとも思います。
アニメは記号である故に「夢」に近く、精神安定効果も高いのだと思います。
漫画やアニメは、足りない物を補ってくれているのかも知れません。
幸せな生活をしている人ほど殺伐とした作品を求め、殺伐とした生活を余儀なくされ、仕事で疲れている人ほど安らげるアニメを求める事が多いのだと思います。
漫画やアニメを見て主人公の立場になって物事を考えるのは、他人の痛みを考える良い契機にもなります。
これは特に「悪人」を主人公にした時に感じ易いくらいです。
「ドラえもん」において、のび太の立場でジャイアンは悪い奴だと考えているだけではダメです。
それと同時に、ジャイアンの立場からのび太を見る話があるからこそ、他人は別の存在であり、別の事を考えていると理解出来る様になるのです。
もし、これらの妄想・想像力がなかったら、「本能」はどうなってしまうのでしょうか?
2011~12年にアメリカでは聖職者が、384人も子どもへの性的虐待が原因で解任処分などを受けています。
1950年から2002年にかけての52年間では、神父の人数11万人の内の約4%に性的虐待の疑いがあると発表されています。
キリスト教では、実は「妄想による姦淫」も罪となっているのです。
一方日本では、「想像の中でなら、誰にも迷惑をかけていないのだから良いじゃないか」と言う意見が多いと思われます。
私も、しっかり対処しなければならないのは、実際に被害にあった人間に対してであり、創造物ではないと思います。
「本能」を満たせない厳しい戒律や法律が、どの様な結果をもたらすのか、もっと研究が必要かと思っているのです。
■ ロリコンのすゝめ?
ロリータコンプレックスの意味は日本と海外では違うのですが、今では海外でも日本語のロリコンを英語化した「lolicon」で通じる様になって来ています。
この様にロリコンの聖地と目され、世界中から良く叩かれる日本なのですが、実態はちょっと違うようです。
<2008年 世界児童ポルノサイトランキング>
順位 国名 サイト数
1位 ドイツ 2139
2位 米国 560
3位 オランダ 413
4位 ロシア 259
5位 キプロス 174
6位 中国 138
7位 カナダ 77
8位 ウクライナ 22
9位 ポルトガル 13
10位 フランス 9
11位 ベトナム 7
12位 日本 6
日本では1980年から1990年までの十年間に、性的な漫画雑誌の売上げは倍増し、性的なコミックスの売上げは三倍に増大しましたが、強姦で検挙された少年男子は半減しました。
性的漫画が誕生する前の犯罪件数は、もっと全然多いので、性的漫画は日本においては犯罪を減らしているとしか言えません。
これらの様な様々な研究もあって、日本では2014年「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」に於いて、
漫画やアニメ、コンピューターグラフィックスによる「準児童ポルノ」は「明確に規制の対象外とする」と決定した訳です。
勿論まだまだ油断は出来ませんし、問題も多いです。しかしそれ以上に海外では、法的に禁止の輪が広がっています。
前述の様にキリスト教圏では妄想も罪なのですから仕方がないとも言えますが。
ニュージーランドでは「ぷにぷに☆ぽえみぃ」が、児童ポルノと認定され発禁処分を受けています。
カナダでは、日本から成年向けコミックを輸入した男性が逮捕・有罪判決を受けました。
スウェーデンでは2005年からインターネットの児童ポルノのブロッキングを開始しましたが、ブロッキング以降も強姦犯罪の増加が止まず、むしろ加速しました。
イギリスでは児童ポルノ摘発に関する冤罪の逮捕者が数千人おり、それを苦にした自殺者が数十人発生したと言われています。
キリスト教圏ではありませんが韓国では、二次元規制の法律を作った為に、1か月で1938人が拘束され、この法律に関し、憲法裁判所に違憲訴訟を起こす動きも広がっているそうです。
また韓国では、性的表現が含まれると言う理由で、日本アニメの下請けが出来なくなって来ていると言う話もあります。
中国は共産圏なので、元々ポルノ自体が違法です。
イスラム圏なども、宗教の問題もあって「性」に対して非常に厳しいのですが、先進国と環境が違い過ぎるので何とも言えません。
ISでは、宗派の違う女性は奴隷でしかありません。神の御意志によって強姦し、最後も神に感謝する始末です。
ただ少なくとも、中国やイスラム教の人の多くも、ネットを繋げば日本のアニメや、ポルノサイトを見るのです。
どれだけ神や主義を信じていても、全く必要ない等とは言えないのだと思います。
一応ですが私は、最終的に人類は、全ての罪を克服して、年間の殺人件数をゼロにする事も出来ると思っています。
ですがそれは遥かな未来です。急激な変化には無理が生じます。
私は犯罪を減らす事に、漫画やアニメも貢献出来ると思っています。
「ロリコン」を描く事は、悪い事ではないと思うのです!
■ 人生をすゝめ!!
「性」や「悪」を闇雲に隠すのは、実は犯罪を生んでいる事さえあるのではないでしょうか?
「人を殺してみたかった」そんな知的好奇心からでさえ、人は殺人を犯すからです。
「カリギュラ効果」と言う物もあります。
子供に対してアニメを見る事を禁止したりすると、普通の楽しさだけでなく、背徳感まで与えるため、隠れて楽しむ事を覚えたり、大人になってから余計に嵌ったりする現象を言います。
大人の皆様には是非、アニメやゲームを簡単に悪者呼ばわりするのではなく、きちんと「悪人」と「善人」を見極める教材として一度肯定してあげて欲しいです。
幼児期にしっかりアニメやゲームを与えておけば、大人達が「いつまでも子供っぽい趣味で恥ずかしい」と言う目線を投げかけるだけで、子供はオタクにならないものです。
大人になってからアニメやゲームに嵌ると、辞め時を失います。
我々オタクにとっては、同志が増えた方が良いのですが……
もし子供の頃に、「悪」や「性」に触れる事を禁止してしまったら、どうなってしまうのでしょう?
その子供は、親に隠れて悪い事をしたり、大人になってから悪い事をしたりするかも知れません。
人は重大な罪はまだしも、些細な罪を犯さずに生きる事など出来ません。
特に反抗期を経験しないで育ってしまった子供は、些細な罪で潰れてしまう事もあるのです。
あまりにも強烈なアニメなどは、逆にトラウマになってしまう事もあります。
サメ映画の「ジョーズ」を見たが為に、当時は海に行けなくなった子供達が結構いたのです。
そうなってしまうと困るのは親です。
ある程度は、禁止しても良いかも知れません。
しかし、日常生活でもトラウマは生まれます。それを癒し導くのが親の務めだと言う事を忘れないで頂きたい。
禁止をするならそれとは逆に、その禁止した物を見せる時期が来たら見せなければならないのです。
「悪」を見せる義務を、放棄してはいけないのです。
ここで親の役目を終わらせてしまうから、子供は変な所で傷つき、変な道を、変な人生を選ぶのだと私は思います。
この様に私は、作品においては「悪い事」を隠すのではなくて、きちんと「悪い事」と「良い事」の両面を描くべきだと思っています。
「精神的」にも、「教育的」にも必要だと思っているのです。
今期のアニメでは「幼女戦記」と「クズの本懐」が、良いサンプルになっています。
部下を平然と死地に送り込み殺してしまう「幼女戦記」の主人公は、いつもヒドイ目にあっています。
他人の恋愛感情を利用しようとする「クズの本懐」の主人公は、傷つき続けています。
悪を扱う作品を、私は禁止してはいけないと思います。
悪を扱うAMV/MADも、私は人生には必要なのだと思うのです。
皆様の人生が詰まったAMV/MADを、私は期待しています!!(自分も作れw
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