ケビン・コールドウェル リマスターAMV まとめ

Column


アメリカのAMVエディターZarxraxさんが、AMV界の伝説ケビン・コールドウェルさんのAMVを全て、可能な限り高解像度のソース映像で作り直す「ケビン・コールドウェルAMVリマスタープロジェクト」を発表し、2020年7月1日、とうとう全ての動画がアップロードされました。

プロジェクトのサイト ⇒ https://www.amvhell.com/?kevincaldwell

この記事は、そのリマスタリングされたAMV全12本をまとめたものになります。
また、各AMV毎に、Zarxraxさんのコメントを一部抜粋し且つおおまかな意訳をして掲載しています。


<ケビン・コールドウェルとは>

ケビン・コールドウェルさんは、1996年から2000年まで活動していたアメリカのAMVエディターです。

彼の、映像と音楽の同期に重点を置くAMVのスタイルは当時比類が無く、多くのAMVファンを魅了し、AMV人気を一気に加速させました。AMVの新境地を切り開くスタイルで、現在のAMVにおける礎を築いたケビン・コールドウェルさんは、AMV史に残る最重要人物として語り継がれています。[1][2]

そんなケビン・コールドウェルさんのAMVは、2000年以降、インターネットの普及と共に彼のファン達によって動画共有サイトに多くアップロードされていますが、1990年代の動画の為、どうしても低ビットレート・低解像度の映像となっています。

Zarxraxさんは、時間の経過と共に、低品質な映像に気を取られずにケビン・コールドウェルさんのAMVを楽しむ事がますます困難になっていると感じ、ケビン・コールドウェルさんが最後に作ったAMVの公開日(2000年7月1日)から20周年となる2020年7月1日までに、彼の12本全てのAMVを可能な限り高解像度のソース映像で作り直す、「ケビン・コールドウェルAMVリマスタープロジェクト」を立ち上げました。

参考
[1]Dana Springall(2004)「Popular Music Meets Japanese Cartoons: a history on the Evolution of Anime Music Videos」<http://hestories.info/popular-music-meets-japanese-cartoons-a-history-on-the-evoluti.html>
[2]Zdeněk Záhora(2009)「AMV jako videoklip a jeho vymezení」<https://is.muni.cz/th/ptgbt/AMV_BC_ZZahora.pdf>


1. The Hazardous Saber Dance(1996年6月)

アニメ「神秘の世界エルハザード」と、アラム・ハチャトゥリアンのバレエ『ガイーヌ』の楽曲「剣の舞」を組み合わせたAMVです。

ケビン・コールドウェルの最初のAMVで、ビデオデッキを使って編集されました。
映像と音楽が同期する瞬間がいくつかあり、一部のクリップの速度変更や、映像を一時停止の状態にするフリーズフレームが使われています。

引用元:Kevin Caldwell AMV Remasters

2. Goldeneye(1997年5月)

テキサス州ダラスで行われたアニメコンベンション”A-Kon 8”のAMVコンテスト参加作です。

アニメ「吸血姫美夕」と、映画「ゴールデンアイ」の主題歌を組み合わせています。

編集では、逆再生が使われており、技術的に前作よりもやや複雑になっています。

引用元:Kevin Caldwell AMV Remasters

3. Beautiful Life(1997年5月)

アニメ「ゴールデンボーイ」とエイス・オブ・ベイスの「Beautiful Life」を使用しています。
”A-Kon 8”の参加作で、テクニック部門を受賞しました。
また、ロサンゼルスのアニメコンベンション”Anime Expo 1998”のAMVコンテスト参加作でもあり、そちらではコメディ部門を受賞しました。
リップシンク、速度変更、クリップのシームレスなループ、クリップの途中でのフレームフリーズが使われており、これまで彼が作ったものよりもはるかに技術的でした。
ローエンドのビデオデッキでこの動画を作成したという事実が信じられません。

引用元:Kevin Caldwell AMV Remasters

4. Media Vita In Morte Sumus(1998年5月)

”Anime Expo 1998”でアクション部門を受賞したAMVです。

「新世紀エヴァンゲリオン」と、映画「冬のライオン」の楽曲「Media Vita in Morte Sumus」を組み合わせています。

多くの速度変更が行われていて、1つのクリップで複数回速度変更されている場合もあり、リマスタリングではフレーム毎に移動してタイミングを正しく調整する必要がありました。

引用元:Kevin Caldwell AMV Remasters

5. Phantom of the Opera(1998年5月)

アニメ「MEMORIES」と、Harajukuの楽曲「Phantom Of The Opera (Techno Remix)」を組み合わせています。

”Anime Expo 1998”ではドラマ部門を受賞しました。

この動画は、リニア編集で作られたAMVの頂点に位置すると考えています。
この動画がビデオデッキで編集されている事を知った時、私の心は吹き飛ばされました。そして、リマスタリングを始めて、その編集の複雑さを直接目の当たりにし、私の心は再び吹き飛ばされました。このAMVには畏敬の念を抱いています。

リマスタリングの編集をしていて最も驚いたのは、分割や複数回の速度変更を使ってシームレスに見えるように作られていたクリップがあると分かった時です。開いた口が塞がりませんでした。ストロボ効果も、まるでノンリニア編集のようです。
また、当時、リニア編集でこれだけの映像と音楽の同期を達成しているAMVは他にありませんでした。

引用元:Kevin Caldwell AMV Remasters

6. The Twist(1999年6月)

「きまぐれオレンジ☆ロード」とチャビー・チェッカーの「ザ・ツイスト」の組み合わせです。
この動画から、ケビンは遂にPCでのノンリニア編集に切り替えました。
このAMVは本当に楽しく、個人的なお気に入りの1つです。

引用元:Kevin Caldwell AMV Remasters

7. Harvey the Wonder Hamster(1999年6月)

「こどものおもちゃ」とアル・ヤンコビックの「Harvey The Wonder Hamster」の組み合わせで、MEPの参加作です。

かなり短い動画ですが、マスキングやトランジション等、ビデオデッキでは不可能だったいくつかの効果を上手く利用しています。リマスタリングを行うまで、これらの効果が使われている事に全く気付きませんでした。

引用元:Kevin Caldwell AMV Remasters

8. Chantilly Lace(1999年6月)

「ゴールデンボーイ」と、ビッグボッパーの「Chantilly Lace」を組み合わせたAMVです。

この動画は特殊効果を使っていませんが、リップシンクや多くの速度変更、そしてデジタル編集によって可能になった細かな編集が行われています。

引用元:Kevin Caldwell AMV Remasters

9. Sleep Now(1999年7月)

「KEY THE METAL IDOL」と、ヒューズ・ホールの「Sleep Now」を組み合わせたAMVです。

”Anime Expo 1998”の参加作で、ドラマ部門を受賞しました。

シンプルで目立たない効果を使用した、非常に堅実なAMVです。

引用元:Kevin Caldwell AMV Remasters

10. Engel(1999年7月)

「新世紀エヴァンゲリオン」と、ラムシュタインの「Engel」を使ったAMVです。
”Anime Expo 1999”の参加作で、総合部門・アクション部門・テクニック部門を受賞しました。
『Engel』は、AMV史上最も有名な動画の1つでしょう。
このリップシンクは、当時比類がありませんでした。

引用元:Kevin Caldwell AMV Remasters

11. Believe(2000年7月)

『Believe』は、今でこそ多くのAMVファンのお気に入りですが、当時は、AMVでほとんど使われていなかったマスキングや合成を多用したこの動画は賛否両論で、”Anime Expo 2000”でも賞を獲得する事が出来ませんでした。
恐らく、このAMVは時代の先を行っていたのでしょう。

このAMVのリマスタリングには、他の11本を作った合計の時間と同じくらいの時間を費やしました。

引用元:Kevin Caldwell AMV Remasters

12. Caffeine Encomium(2000年7月)

ケビンの最後のAMVは傑作です。
「こどものおもちゃ」の超アクティブなサナちゃんは、活発なクラシック音楽「ウィリアム・テル序曲」にピッタリで、アニメーションと音楽の同期は、今日に至るまで私が見た中で最高の1つです。
”Anime Expo 2000”では、コメディ部門を受賞しました。
『Believe』と『Caffeine Encomium』は、”Anime Expo 2000”で総合部門を受賞する事は出来ませんでしたが、それにも関わらず、この2本は多くのAMVファンのお気に入りのままです。

引用元:Kevin Caldwell AMV Remasters


以上、ケビン・コールドウェルさんのリマスターAMVでした。

まさか、AMV史の転機を作ったといわれているケビン・コールドウェルさんの動画を、より高画質で視聴できる日が来るとは思ってもみませんでした。
大好きな『Caffeine Encomium』をHD画質で見れた時は本当に嬉しかったです。

途方もなく大変な作業だったと思いますが、このプロジェクトを最後までやり遂げて下さったZarxraxさんに多大な感謝です。

Column

Posted by John